日常の進捗

主に自分のための,行為とその習慣化の記録

2021年のクリエイティブコーディングを振り返る

2021年のデイリーコーディング
2021年のデイリーコーディング,数えたら419ありました.

この記事は Processing Advent Calendar 2021 の 22 日目の記事です.締切を守れなくてすみません!🙇もう少し準備できる予定でしたが,年末進行と冬の自分の能力低下を甘く見積もっていました.冬は普段より1~2時間長く寝てしまいます.

昨年の振り返り同様,月別に以下の項目で気づいたことを書いていきます.また,月ごとにお気に入りのスケッチを掲載します.

  • デイリーコーディング
  • 対外的な発表など
  • コミュニティ活動
  • 生活・その他

振り返りは月ごとに

  • OpenProcessingで公開しているスケッチからお気に入りを選ぶ
  • Twitterの投稿を月ごとに読む
  • Googleカレンダーの予定をチェック

で行いました.その他,関係者の敬称を「さん」で統一しました.確認したり関係で名称を変えたりするのが結構ややこしかったので……全人類「さん」でいいですよね〜.


1月

2021年1月
2021年1月

デイリーコーディング

2021年の初頭は画像や2D/3Dのグラフィック,WEBカメラを用いたインタラクティブなものなど,その日の思いつきでコードを書いている感じがあります.気に入ってるのは,このお正月に書いた元旦っぽい配色のスケッチです.パターンは自分で書いていても,今見返して「これどうやってるの?」みたいな驚きがありました(笑).書いていくと忘れるので,そういうことはよくあります.窓を開けて,ブラウザを開いて,いつでも新鮮な気持ちです.

コミュニティ活動

PCD2021の準備をしていました!

生活・その他

👶が誕生日を迎え1歳になりました.すくすく育っています!

2月

2021年2月
2021年2月

デイリーコーディング

PCD2021のプログラムを意識しながら,そういうものを元ネタにしてコードを書いていた形跡があります.情報可視化から連想してグラフを書いたり楽しそうです.お気に入りはPCDで開催したサヤマさんのワークショップ「Generative Illustrations」で制作した,ジェネラティブな車のスケッチです.サヤマさんにWSの開催をお願いできて夢が叶いましたし,たくさん発見のあるワークショップでした!

コミュニティ活動

2/20-21の2日間にわたってProcessing Community Day Japan 2021をコミュニティのメンバーとともに主催しました!キーノートはデータビジュアライズデザイナーの山辺真幸さんにProcessingを用いた情報可視化について話してもらうことができました.山辺さんは同じProcessing/p5.jsという環境を用いながら目指すところやアプローチは真逆という,とても良い関係で議論できて発見が多く,とても感謝しています.イベントではトークセッション「自分らしくクリエイティブな活動をするには」というテーマでayakoooさん,ちにゅりさん,菅野創さんといった三者三様のスタンスで活動するアーティストの在り方について幾つかのトピックから議論が行われました.翌日の岡千穂さんのライブコーディングのワークショップ,みんなで音を鳴らして楽しかったな〜!

pcd-tokyo.github.io

3月

2021年3月
2021年3月

デイリーコーディング

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Generativemasksのアイデアの変遷

3月はNFTアートプロジェクト「Generativemasks」のスケッチの原形につながるスケッチに取り組んだ時期でした.シンメトリーをビットマップ,図形,字形,Emojiや3Dといった形であれこれバリエーションを展開させていった変遷を観ることができます.そういう感じで,毎日アイデアが別の技術要素とつながったり,転がっていく感じが楽しかった時期でした.また,これらのスケッチをNFTにしようとか,そういったことはこの時点で全く考えていませんでした.

生活・その他

BeepleのNFT作品が約75億円で落札」のニュースには驚きました.驚きの主な原因のもとには,彼のEverydaysと呼ばれる毎日継続する創作活動があります.アウトプットの傾向やツール,マインドセットは自分のデイリーコーディングとは違いますが,継続することやSNSで公開することなど,形式は類似点が多いと感じていたからです.実際に「Beepleのように自分の思っていることを発信していいんだ」と思っていた時期もありましたし(ただ今は自分とは少し違うな,と感じる点もあります).そんな感じで,これまで以上にアーティストの活動歴やその人の背後にあるストーリーのようなものが重要視される時代になったのかもしれない.そういうことを考えていたと思います.

もう一つ,初のゼミ生が卒業しました.僕は周りの影響を受けやすいタイプなので,学生の活動からは日々影響を受けることが多いです.例えば今のデイリーコーディングにおける「完成度や成長を(短期的に)目指さない」というようなマインドセットは,大学での学生との交流の中で今の形になったところがあります.そういった意味で,一番身近に接してきたゼミ生にはとても感謝しています.

4月

2021年4月
2021年4月

デイリーコーディング

3月から取り組んでいたGeneratrivemasksのプロトタイプが「これこれ!」という感じ,一旦完成のところまできました.一つ一つに「愛着」が感じられるようなユニークさをグラフィックに与えられたように感じて,そのときは言葉にできない達成感があったことを覚えています.しかるべきときに使おうとは思っていたんですが,特に発表の予定もなかったので一旦横においておいて,他の技術的・表現的なトピックに関わるスケッチを作っていきました.

コミュニティ活動

コミュニティのオンラインイベントに関連する活動を主に一人でやるようになりました.このあたりから,例えば資金的なものだったり,関わる人だったり,自分の時間だったりがもっとあればと感じる機会が少し増えました.今思えば,単純な話ではなくて,仲間を募ったり,コミュニティの温度を誰もが快適であるように適切に保つことは,非常に労力がかかるということに,気がついたのはもう少し後でした.今年はそういった部分で反省が多い1年でした.

生活・その他

尊敬するジェネラティブアーティストのTylor Hobbsさん(後にNFTアートのコレクション「fidenza」で世界で話題になる)のブログエントリで,コーディングを続けることの苦労や乗り越え方について書かれている記事を発見.とても励まされました.以下気になった箇所の日本語訳での引用です.

「驚いたことにアイデアはあまり重要ではありません。大切なのはスタジオで時間を過ごすことです。物理的に座って何かをしていると新しい作品が出てきます。ゴミになるけどいいや,という前提で始めてもいい。ゴミを捨てるうちに素敵なものが現れてきて、何に取り組めばいいのかがわかってきます。」

もう一つ.👶が保育園に通うようになりました.👶は平熱が高く,記録を見返すと病院で診断書をもらう7月までは発熱で頻繁に保育園から呼び出しがありました.どうすればよいのかわからず,春は家族とともに仕事と生活の両立で苦労した時期でした.

5月

2021年5月
2021年5月

デイリーコーディング

自分のデイリーコーディングは見返すと本当に節操がないというか取り留めがないというか,「やってるね」以上の具体的な言葉で言葉でまとめづらい感じで活動している気がします.ただ,その中でも自分の印象に残るようなスケッチはあって.この月選んだスケッチはヘリンボーンクリッピングを組み合わせたパターンのスケッチです.nukemeさんの家を改装している床からインスピレーションをもらって.その後やってみて色々展開した感じでした.実際まだ出来そうな感じがします.

「平面に図形を敷き詰める」だったり「空間に立体を充填する」ように発想しているところは,自分のデイリーコーディングの基本姿勢として,技術やアイデアの組み合わせやバリエーションをとにかく展開して✔チェックしていく,塗りつぶして広げていくようなアプローチと似通っているかも,先日山辺さんに指摘されて気づきました.

その他

NFTアートに関する企画の相談を高瀬俊明さんからいただき,やり取りする中でGenerativemasksのプロジェクトが少しずつ動き始めた頃でした.寄付や展開に関するアイデアの話をしていた記憶がありますが,当初の牧歌的な想定とその後の現実とがあまりに乖離していて,その落差に気づくも後の祭り,ツケがQ4で回ってくる感じです.

6月

2021年6月
2021年6月

デイリーコーディング

年間を通じて定期的にウェブカメラを使ったインタラクティブなスケッチに取り組んでいます.タイミングは単純に思いついたりアイデアがでてきたときにやっています.顔/手の位置やグラフィックそのものが取得できたとしてそういったものを用いてビジュアルを再構成できないか,だったり.あまり重たくせず,サンプルと違うものができればOKくらいの軽い気持ちで取り組んでいます.

良し悪しに依らない,こういう素朴な喜びを忘れないでやっていきたいです.

コミュニティ活動

SNSでの巡回等以外のコミュニティでの活動がおろそかになっていった頃でした.オンラインイベントの主催についても,自分のモチベーションの部分が保てずアイデアがでなかった記憶があります.「Generativemasks」の活動はコミュニティに寄与すべき自分の活動量を犠牲に行ってきたところもあると感じていて,その負債は今後返していかなくてはと思っています.

7月

2021年7月
2021年7月

デイリーコーディング

この月は個人的なコードでの発見が多かった時期でした.剪断変形(shear)はこれまでもよくわからず使いあぐねていたところでしたが,一つ一つの図形を歪ませることで固有性をもたせたりすること以外の使い方が見つかったのは今後も展開ができそうで良かったです.どこかで直接使ったわけではなかったのですが,その後の作品のアイデアに繋がりました.

コミュニティ活動

7月は日本のProcessingコミュニティの特にOpenProcessingでコードを公開する仲間が標的となって,コードがライセンスで規定・許容される使用範囲を侵害してNFTアートとして販売される盗用事案が起こり始めた頃でした.このときはコミュニティのアレクシー・アンドレさんから連絡をもらい,情報共有しながらやり取りを進め,解決できました.OpenProcessingも公開しているコードのライセンスを一括で変更する機能や,スケッチの表示時にライセンスを明示的表示する機能を追加するなど対策を講じてくれました.迅速な対応に感謝しています.

これ以降,2021年末までの間に僕の観測範囲では10人以上の国内のクリエイティブコーダーが標的となり,件数で言えばおそらく20以上のコードが盗用されてきました.発見したタイミングで関係者に連絡したりプラットフォームのマネージャーにコンタクトを取るなど対応を講じてきました.様々なケースがあり個々の事例を列挙することは割愛しますが,原理上一つのコードから大量のバリエーションのグラフィックを生成可能な,クリエイティブコーディング/ジェネラティブアートが直面する問題について,引き続き適切な行動していきたいと考えています.これだけでも1つ長文のブログが書けそうですね.いずれにせよ,この頃にクリエイティブコーディングの牧歌的な時代の終わりを感じ始めていました.

8月

2021年8月
2021年8月

デイリーコーディング

2015年に自分だけの活動として始めたデイリーコーディングは,2019年からはある意味でソーシャルなコーディングにやり方を変えながら今も続いています.その一つの結実として,今年8月17日に「Generativemasks」を発表することができたことは,個人的にとても意義深いものになりました.その一方で,最近は明確なゴールや目標を持つことを止め,「アート」や「プログラミング」のような既存の枠組の価値観に縛られない,オルタナティブで自由な「プログラミングが苦手な自分を含めた,残された誰か」とともにある活動として,自分のデイリーコーディングを位置づけるように考えはじめた時期でもあり,とても不思議な状況だと思っています.プロジェクトの成功は,僕自身の実力以上のものが発揮されたこと以外にも,運や巡り合わせといった要素の掛け合わせによる効果が大きく,慢心せず今後も活動していくつもりです.読み進めるとわかりますが,謙虚でいることに関しては早速失敗しています.

実のところ,販売開始までは「NFTの投機的な状況をハックする」みたいな考えを持って取り組んでいました.ところが作品が完売し大量の自作が流通すると,NFTアート作品そのものの性質(作品が流通,売買され続ける),僕自身の来歴がブロックチェーンに紐付いたことから,一旦寄付して終わり(痛快!ヒャッハー)というよりも,中長期的な視点をもって作品的価値を担保するように努めることが,この黎明期に自分が取り組むべきことなのではないかと考えるようになりました.一次収益の寄付から,二次収益まで含めた継続的なコミュニティ支援へ向けて構想を始めたのも実は完売直後から2週間ほどの間でした.

このように,Generativemasksは発表前後と今ではビジョンと取り組みが変わってきています,変節ではないと信じていますが.当初から「利己的な円環」と呼ぶ楽観的なアイデアを,どこまで現実的で社会性のある活動に発展させられるかについては,2022年も継続的な取り組みとして進めていきます.

実は8月はもう一つ,NFTアートの作品「CityScape」をOpenProcessingが主催するコレクション「Crayon Codes」の一つとして発表しました.こちらは現在住む兵庫県神戸市は山と海が近くて,その間の狭いエリアにひしめくように建物が並んでいる様子を普段から観ていて,そういうことをコードで表現したいなと思って制作した,Generativemasksに比べると個人的な作品です.こちらも寄付のプロジェクトでアメリカのProcessing財団,OpenProcessingに収益の約2/3を寄付できました.

コミュニティ活動

8月21日にミートアップイベント「Processing Community Hangout Japan #06」を開催しました.コミュニティ内の交流とProcessingの誕生20周年を祝うことを目的として,オンライン(SNS上)でのコーディングと,Remoで交流会を行いました.開催後レポートを書いたのですが,嬉しいことに英訳したものが本家Processing財団のアカウントで掲載されました.このときの雑談会で,コミュニティのメンバーのみなさんと話せたこと,Generativemasksで翻弄される僕を温かく見守ってくださってくださる雰囲気,それらは本当に得難いものと感じたことを覚えています.とても励まされました.

takawo.substack.com

medium.com

生活・その他

👶と暮らす中で手狭になってきたこともあり,春頃から内見や手続きを進めて,旧居から徒歩10分ほどの賃貸住宅に引越しました.8月の初旬はフローリングを敷いたり壁紙を貼るなどDIYリノベのようなことをしていて,中旬は引越や荷解きをしていました.建物は古いですが,その分広くなったので👶は楽しそうに暮らしていて良かったです.自分も仕事の部屋を分けつつ,家族との時間を様々なシーンで持てるようになりました.

9月

2021年9月
2021年9月

デイリーコーディング

Generativemasksがありがたいことに話題になり,完売直後からDiscordのコミュニティに大勢の人が押し寄せました.まったく不慣れなため,自分自身もそういう時流に飲み込まれた時期だったと思います.トレンドに機敏に対応する/それができる自分みたいなところを変に意識しすぎていた部分もあって,時流を読めるやつ,NFT通っぽく振る舞っていた気がします.ニーズに応じるようにGenerativemasksに関連するツールを作って公開して,それを喜んでもらえることはとても嬉しかったですが,プロジェクトの支援者やコレクターのためにコードを書かなくてはいけないと思うことが,少しずつ負担になっていったことも事実でした.NFTのマーケットプレイスOpenSeaでやりとりされる作品の価格は日々変動するので,その変化に感情が左右されることもあり,作品の価値を高めるためにツールを作ったりPRをする中で,自分が制御・操縦しているつもりが,結果的に振り回されていたと思います.

今思うと,そのときは過分な対価を得たことに責任を感じていて,睡眠時間を削って(というか気負いもあって眠れなかった)取り組むことが正しいと思っていました.今なら「もう少しリラックスしたら?デイリーコーディングってもっと気楽で適当で優しいものだよね」って過去の自分にアドバイスできると思うんですが,視野が狭くなっていました.

危機的な状況に気がつけたのは,家族と話しているときでした.「収益がこれくらいで,これからこういう野心的なことを考えているんだ」というようなことを話しているとき,パートナーに「でも今のあなたは苦しそうだよね,前は『今日はこういうことを考えてこんなコードを書いた』『PCJの〇〇さんがすごいんだよね』みたいな話をしてて,今よりずっと楽しそうだったよ.何か間違えてない?」というようなことを言われました.言われてすぐは反射的に「そんなはずない!今のこの苦悩は僕にしかわからないよ!」というようなことを答えたと思います.数時間後に少し冷静になって考えて,自分の間違いに気がつきました.パートナーや👶と接する時間が減り,負担を押し付け,一緒にいてもどこか上の空の自分,常に落ち着かない自分はどう考えても間違っていました.そこからは,話し合いながら少しずつ軌道修正しているところです.

もう一つ後悔していることがあります.9月はGenerativemasksの寄付先の一つであるカラーパレットの共有サイトCoolorsの開発者のFabrizio Bianchiさんに連絡をとろうとしていました.かねてから寄付候補先には,許諾や方法を確認しており,彼へも7月から数度コンタクトをとっていましたが,返信がありませんでした(後から彼から聞いた話では意図的にバカンス時期は強制オフラインになる期間を設けていたとのこと).次第に連絡がつかないことに苛立った僕は,公然の場で彼にリプライしたり,連絡がつかないことを公言しました.更に「Coolorsの広告にバナーを出せば彼にも届くはず.そういうハックは面白いんじゃないか?」と思って作ったのが,このバナーです.自分は寄付をするんだから,多少の無礼は問題ない,というような考えは,今思えば完全に間違っていました.彼の状況や周囲への影響を考えなかった当時の自分の行動を反省しています.

対外的な発表など

母校である情報科学芸術大学院大学IAMAS]の卒業生インタビューの企画で,映像作家でIAMASの前田真二郎さんと対談しました.

www.iamas.ac.jp

www.iamas.ac.jp

対談の依頼は7月にいただいていたのですが,収録がGenerativemasks完売直後で結果的に最速で作品への言及があったインタビュー記事となりました.主査だった前田さんと,大学院修了後から10年以上に渡る活動や作品について議論できたことは非常に得難いものでした.人と話すことで得られる発見は当事者としてはとにかく多いものの,噛み合う場合とそうでない場合がある気がしていて(だからといって噛み合えば良いというものでもなさそうなのですが),前田さんとは師弟関係もあって噛合い過ぎて最終的に大気圏外にいっちゃってる感じもあって(笑),そういうところも含めてとても気に入っているインタビューです.8月時点(確か10日経ってないくらいで)収録でこの解像度で作品の議論をできたことは,その後の様々な場面で活きた経験になりました.

その他,「#NFT作家座談会」というTwitterスペースで.草野絵美さんやせきぐちあいみさんらとNFTアートの状況について少し喋ったりしていました.当時,情報商材系の方々がNFTアートに参入してきた頃で,僕からは彼らが情報商材でやってきたことと同様のスキームでNFTを扱うような素振りに感じられ,危機感を覚えたのが開催の動機でした.しかし,よくよく観察していくと既存の多くのNFTアートと,自分がやっているようなジェネラティブアートxNFTアートとでは,マーケット(国内/海外)やケーススタディ,課題の多くが異なっているように感じてきたことも事実です.次第に「自分が広範なNFTアート全体に意見することはそれなりに責任が伴い,自分のプロジェクトも未完の中で取り組むべきことなのか?」というようなことも考えるようになりました.たかくらかずきさんをはじめとしたクリエイターの方々と意見交換するのは楽しいので,1事例/1クリエイターとして今後も関わっていけたらと思っています.

コミュニティ活動

8月のイベントで雑談して気軽に意見交換できたので,自分が長く関心をもってきた「クリエイティブコーディングと教育」をテーマにしたオンラインイベントの企画を考えました.11月に実施までタイムテーブルやウェブサイトでの告知などを準備しました.

10月

2021年10月
2021年10月

デイリーコーディング

10月はとても嬉しい出来事がありました.Processing コミュニティのコーディング仲間 deconbatchさんが,Generativemasksのコードをもとに,派生作品創作のためのJavaScriptモジュール「garg」を開発してくれたことです.

jp.deconbatch.com

デコさんのコードを読むことで改めて自分のコードの問題点や,発展可能性について気づいたことが多くあって,大変勉強になりました.そういう具体的なフィードバックとは別に,誰にとってもGenerativemasksの派生物が作りやすくなった状況が生まれたことで,どこか肩の荷が降りた感じがして,以前のようにコーディングに向き合えるようになった気がします.2022年はgargの普及を目指したいと思います!

対外的な発表など

エキソニモ『CONNECT THE RANDOM DOTS』にメディアアートインターフェイス研究者の水野勝仁さんとともに出演しました.当時はまだそういった機会に不慣れで,時間もあって言いたいことが十分言えなくて悔しかったことを覚えてます.エキソニモはNFTにも彼ららしい人間臭さみたいなものがでていて,とても興味深く活動を追いかけています.

muuseo.com

同時期にグリッチアートの制作と研究で知られるプログラマー/アーティストのucnvさんからインタビューしていただいた記事が公開されました.ucnvさんは2011年の「グリッチ・ワークショップ」以来のお付き合いですが,様々な点で自分とは対照的な活動をしていて(本流から逸れてるのは僕の方です),NFTアートに関する特にアーティスト視点からの懸念や課題について,鋭く意義のある質問を投げかけてもらいました.英訳記事も近日公開予定ですが,こういった記事が残るのは本当にありがたいです.

sb-rs.com

sb-rs.com

11月

2021年11月
2021年11月

デイリーコーディング

4月から「言葉遊びを起点とした創発的な場作り」という研究題目で,京都工芸繊維大学大学院の津田和俊さんと言葉遊びの研究をやっています.今年はインタビュー調査を主に進めているところなのですが,11月は「言葉遊びとコーディングの可能性を探るぞ!」などと考えてコードを書いた時期もありました.

対外的な発表など

8月以降に受けた取材やオファーなどが公開されるタイミングだったこともあり,11月は露出が多くありました.

美術手帖』2021年12月号の特集「NFTアートってなんなんだ?!」で,Generativemasksが表紙を飾らせてもらう大変光栄なことになりました.アーティストインタビューの他,ライゾマティクスの真鍋大度さんやエキソニモとの鼎談も掲載されています.NFTに関して詳細に解説されており,人にNFTアートについて説明するときに便利な資料になっています!

www.amazon.co.jp

もう一つ,紙媒体でSWITCH×インテルのフリーマガジン『DIGITAL CREATIVE MIND powered by インテル® Evo™ プラットフォーム』でもインタビューが掲載されました.10組の音楽や映像など様々なクリエイターの方がコンピュータを使ったクリエイションについてお話されている中で,+1のおもしろ/特殊枠で「クリエイティブコーダー」として掲載いただきました.これ,本当の「11人いる!(萩尾望都)」みたいなやつになっています(笑).家電量販店などで無料配布されているそうなので,お見かけの際はお手にとっていただけたら.

11月5日に,多摩美術大学美術学部情報デザインコースでゲストレクチャーとして,「クリエイティブコーディング:デイリーコーディングとGenerativemasks」というタイトルで発表とディスカッションを行いました.永原康史さん,清水淳子さんがホスト,同じくゲストして山辺真幸さんで,好対照なトークになった気がします.作ったものの権利や価値をどのようにシェアしていくか,みたいなところって,まだまだ議論が足りていない部分もあるなぁ,と思いました.クリエイティブ・コモンズはいいですよ.

11月19日に「〈NFTアート〉の可能性と課題」というウェビナーに出演しました.3時間という長丁場の中,IAMAS小林茂さんがモデレータ(毎回思うんですが,茂さんのモデレーションというか,場の回しの手際はスゴいです)で,NFTアートの技術的側面の解説や自作「WAN NYAN WARS」の紹介を加藤明洋さんがやってくださったこともあって,Generativemasksやデイリーコーディングの話を1時間ほど.気負わずリラックスして話せました.自分らしいムードで活動について話せたのは,このタイミングがきっかけだった気がします.それまでも今もたどたどしいですが,ひとつ吹っ切れたというか,つかめた感じがしました.

youtu.be

イベントが終わってからも,NFTアートのクリエイターが利用可能なステートメントの在り方について議論するなど,しばらくは定期的に活動が続いていきそうです.

コミュニティ活動

11月13日にオンラインイベント「Processing Community Hangout Japan #07」を開催しました.教育のセッションでは僕が話を伺いたいと思っていた方々に出演いただけた僕得イベントになりました.こういう個人の「やりたい」をドライブする感じでコミュニティイベントなりの企画運営ができるといいんですよね.ご登壇いただいた,Studio Kuraの松崎宏史さん,明治大学中村聡史さん,前橋工科大学田所淳さん,「ARTiS」のohayotaさん,多摩美プログラミング部のJIEYUNさん,徳保晴人さん,ありがとうございました!

https://pchj07.peatix.com/

12月

2021年12月
2021年12月

デイリーコーディング

忙しいなりに時間を見つけてコードが書けた時期でした.自分のデイリーコーディングは,これまで「楽しい」「美しい」を目指して素朴で短いコードを書いてきたような気がしています.それ自体は今後も続いていくと思うのですがGenerativemasks以降これまでのように単純でいることも難しく,自分の中でも悩んだり葛藤する時間が増えました.そういうポジティブではないモヤモヤした感情,過ぎてしまったことへの未練や後悔のような想いをありのまま表現するのもいいのかなと,この時期は抽象的なグラフィックとして表現しようとしていました.そういう成果が同じく12月にCrayon Codesで発表したNFTアート作品「SinteredMemories」につながりました.コードによる色褪せる,滲む,くすむような表現は,まだまだ可能性がある気がしています.ただ,Generativemasksを発表したことを後悔しているというようなことはなくて,折々での自分の選択や判断についての葛藤です!

対外的な発表など

12月18日「先端テクノロジーと表現 #5」でオンラインのレクチャーに出演しました.ホストはキュレーターの高橋裕行さんでした.高橋さんとは以前から話したいと思っていたのでとても良い機会になりました.有料のイベントだったのでアーカイブは公開されませんが,無料公開されているメディアアート史の連続レクチャーはオススメです.

https://peatix.com/event/3097781/view

12月21日多摩美術大学が主催する,誰もが参加できる期間限定のヴァーチャル大学“Tama Design University”の連続講座に出演しました.クリエイティブコーディングを出発点として「何のために、誰のためにコードを書くのか?」というテーマで60分話しています.ここでもリラックスして話せたかな.毎度不思議な話をしていると思うのですが…....

tub.tamabi.ac.jp

ウェブの記事では「クリエイティブコミュニティを醸成させるためにできること」と題して,TDSWの共同創業者naruminさんと対談した記事がリアルサウンド テックから公開されました.naruminさんはTouchDesignerのコミュニティを盛り上げる活動を続けていて普段から刺激をもらっています.今後コミュニティを横断して何か一緒にやっていけたらというような話もしているので,そちらも楽しみにしています.

realsound.jp

年末,グラフィックスプログラミングとウェブ開発をテーマにした話題のポッドキャスト #normalizefm に出演しました.ホストの.@h_doxas さんはそれこそデイリーコーディングを始めた2015年頃からwgld.orgを観てWebGLについて勉強したりしていたので,まさかこんなことが……という感じでした.また,お互い年齢も近くキャリアパスも似た感じのところがあって,不思議な共感めいたものがありつつの収録になりました.

normalize.fm

生活・その他

実家に帰ったときに,ふとしたタイミングで母のパッチワークキルトが目に止まりました.「そう言えば僕の子どもの頃からずっとやってるなぁ」と思って周囲を見渡すと,たくさんの作品が飾られていて,一つ一つを観ていくと自分の取り組んでいた「グラフィックのためのクリエイティブコーディング」のような幾何学図形のパターンがキルト上で行われているのを発見しました.コードを書いているときに母の存在やパッチワークキルトを意識したことは一度もなかったんですが,家族からの影響って受けるものなんだと不思議に思っています.たしかに僕の適当さは,母譲りのところがあるかもしれません(笑).


1年を振り返ると想像を越えた大変充実した年で,様々な得難い経験ができたと思っています.ただ,全てが完璧で,素晴らしいというわけでもありませんでした.特に生活とコーディング,それらに付随する活動の両立は今まで以上に困難が多く,精神的・体力的に苦しい時期もありましたし,しばらく続きそうです.もう少し健康で,安らかな日々を送っていけるといいなと思います.日々をいつも支えてくれる家族と,身近にいる友人,励ましてくれるコミュニティの存在に感謝しています.